池袋の路地裏に、昭和44年から変わらぬ味を守り続ける洋食屋がある。「キッチンABC」だ。
創業から半世紀を超えるこの店の魅力は、店内で味わう名物メニューだけにとどまらない。近年は、店の味をそのまま冷凍化して24時間いつでも買える自動販売機「ABCシェフズ」を展開し、新しいファン層を広げている。看板メニューの中身から、話題の冷凍自販機の正体まで、じっくりリサーチしてまとめていく。
「昭和の洋食屋」と聞くと懐かしさばかりが先に立つかもしれないが、キッチンABCは伝統を守りながらも新しい仕組みに挑戦し続けている点が面白い。半世紀続く味と、令和らしい売り方が同居しているギャップにこそ、この店の本当の魅力があるように思う。
池袋・豊島区の老舗「キッチンABC」ってどんな店?
キッチンABCの歴史は1969年(昭和44年)10月、豊島区要町に1号店をオープンしたことから始まる。運営元は株式会社東京フードサービス。以来、1975年に南大塚店、1992年に西池袋店、2011年に池袋東口店、2017年に江古田店と、着実に店舗を増やしてきた。現在は豊島区・練馬区を中心に4店舗を構え、2025年9月には西武池袋本店のデパ地下にも新業態を出店している。
営業時間はどの店舗もおおむね11:00〜22:00(L.O.21:30)で年中無休。「一食入魂」「一皿一会」を企業理念に掲げ、「舌ではなく、脳が覚える味」というユニークなコンセプトを大切にしている。単に美味しいだけでなく、記憶に残る温かい一皿を届けたいという思いが、半世紀を超えて愛され続ける理由なのだろう。

目印は遠くからでもよく目立つオレンジ色の看板。店頭のショーケースには食品サンプルがずらりと並び、値段も一目で分かるようになっている。この「昭和の洋食屋らしい佇まい」こそが、キッチンABCの隠れた魅力のひとつだ。派手な演出をしなくても、通りがかりの人の足を止めさせる説得力がこの看板にはある。
看板メニュー「オリエンタルライス」の正体
キッチンABCの看板メニューにして人気No.1が「オリエンタルライス」(900円)だ。豚肉とニラを秘伝のタレでガーリック炒めにし、ごはんの上にたっぷりのせて、仕上げに生卵を落とすというスタミナ満点の一皿。ニンニクとタレの香ばしい匂いが食欲を刺激し、卵を崩して全体を混ぜ合わせると、また違った味わいに変化する。

6月からの季節メニューとして、辛さを加えた「辛エンタルライス」(900円)も登場する。もう一つの看板「黒カレー」との組み合わせである「オリエンタルライス&黒カレー」(1,000円)は、2つの名物を一度に楽しめるハーフ&ハーフの人気メニューだ。ドライカレーを薄焼き卵で包み、黒カレーをかけた創作メニュー「オムカツカレー」(1,450円)まで用意されており、名物同士を掛け合わせる遊び心も感じられる。
他にも、揚げたてのチキンに甘酢タレと自家製タルタルソースを合わせた「チキン南蛮タルタル定食」(1,050円)、デミグラスまたはシャリアピンガーリックソースが選べる「自家製手ごねハンバーグ定食」(1,180円)、デミハンバーグ・豚からし焼肉・チキン南蛮タルタルを一度に味わえる「特盛りA・B・C」(1,580円)など、ボリューム重視のメニューが充実している。
同じく町の洋食屋の実力を取材した記事もあるので、食べ比べにぜひ活用してほしい。

店の味を24時間。冷凍自販機「ABCシェフズ」とは
キッチンABCが2022年8月から展開しているのが、冷凍自動販売機「ABCシェフズ」だ。「街の洋食屋が食卓へ贈る、ごはんのお供」をコンセプトに、店でしか食べられなかった味を、いつでもどこでも持ち帰れる形にしたいという思いから生まれた。同年11月には公式オンラインショップもオープンし、通販でも購入できるようになっている。

設置台数は都内に複数台。ABCファクトリー本駒込(文京区)、池本だんだん公園横(豊島区池袋本町)、キッチンABC江古田店(練馬区)、キッチンABC南大塚店(豊島区)、日本交通板橋営業所前(板橋区)、赤羽津川屋酒店前(北区)など、地域ごとに商品ラインナップを変えながら展開している。ほとんどが24時間利用可能で、電子レンジで約5分温めるだけで店の味を再現できる。
店舗が閉まっている深夜や早朝でも、行列に並ぶことなく名物メニューを手に入れられるというのは、忙しい現代の暮らしにはうれしい仕組みだ。飲食店にとって営業時間は大きな制約だが、冷凍という手段を使うことで、その制約を上手にくぐり抜けている点が興味深い。
冷凍のまま自宅にストックしておける手軽さは、当ブログで紹介している冷凍作り置きの考え方とも通じるところがある。忙しい日の食事準備の参考に、あわせて読んでみてほしい。

全品1,000円。人気No.1は「オリエンタルライス弁当」
ABCシェフズの価格設定はシンプルで、基本的に「ALL ¥1,000(税込)」の均一価格。多くの商品は2種類のメニューを一度に楽しめる組み合わせ式になっており、「にんにく焼肉&ハンバーグ(デミグラスソース仕立て)」「豚からし焼肉&黒カレーソース」「チキン南蛮&にんにく焼肉」など、11種類ほどのラインナップから選べるようになっている。

店舗で食べる単品よりも、複数のメニューを一度に楽しめる組み合わせを軸にしているのが自販機ならではの工夫だ。ちなみに、単品の冷凍惣菜としては「豚からし焼肉」(450円)や「オリエンタルライス弁当」が用意されており、公式通販でもオリエンタルライス3食セット(2,980円)や豚からし焼肉3食(1,800円)、人気名物セット4種5食(2,600円)などがまとめ買いできる。中でもオリエンタルライス弁当は自販機・通販ともに人気No.1の座を守り続けている。
2種類の名物を一度に味わえる組み合わせ方式は、「どれか一つに絞れない」という贅沢な悩みを解決してくれる仕組みでもある。店舗のように単品でじっくり選ぶのも良いが、自販機ならではの「欲張りな組み合わせ」を楽しむのも、この店を知り尽くしたファンならではの選び方かもしれない。
行く前に知っておきたい店舗情報
複数店舗を展開しているキッチンABCだが、基本的な営業条件は共通している。主な情報を表にまとめた。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 店舗展開 | 西池袋店/池袋東口店/南大塚店/江古田店/西武池袋本店デパ地下 |
| 営業時間 | 11:00〜22:00(L.O.21:30)※店舗により多少異なる |
| 定休日 | 年中無休 |
| 主なメニュー | オリエンタルライス900円/黒カレー/オムカツカレー1,450円 |
| ABCシェフズ | 都内複数台設置、全品1,000円、多くが24時間利用可能 |
| 通販 | 公式オンラインショップで購入可能(2022年11月開設) |
店舗ごとに営業時間や取り扱いメニューが多少異なる場合があるため、訪問前には公式サイトの店舗情報で最新情報を確認しておくと安心だ。自販機も設置場所によってラインナップが変わるので、目当ての商品がある場合は事前にチェックしておきたい。支払い方法についても店舗と自販機で対応状況が異なることがあるため、あわせて確認しておくとよいだろう。
初めて訪れる人が気になるポイントQ&A
最後に、初めてキッチンABCやABCシェフズを利用する人からよく聞かれそうな疑問を、ここまでの内容をもとに簡単にまとめておく。
Q. 店舗と自販機、どちらを利用すればいい?
できたてを味わいたいなら店舗、深夜や早朝に小腹が空いたとき、家で手軽に楽しみたいときは自販機や通販が便利だ。用途に応じて使い分けるのがおすすめで、両方を試して味を比べてみるのも面白い。
Q. 自販機の商品はどのくらい日持ちする?
冷凍状態での販売のため、冷凍庫で保管すれば数週間単位の保存が可能だ。ただし商品によって賞味期限は異なるため、購入時にパッケージの表示を確認しておくと安心だろう。
Q. 初めてならどのメニューがおすすめ?
店舗なら看板の「オリエンタルライス」、自販機なら定番の組み合わせである「にんにく焼肉&ハンバーグ」や「豚からし焼肉&黒カレーソース」が鉄板だ。まずは看板メニューでこの店の実力を確かめてみてほしい。
まとめ|半世紀続く味を、店でも自販機でも
キッチンABCの魅力は、昭和44年から変わらないオリエンタルライスや黒カレーの味わいだけではない。「舌ではなく、脳が覚える味」を大切にしながら、時代に合わせて冷凍自販機や通販という新しい届け方に挑戦し続けている姿勢も、この店ならではの個性だ。
池袋・豊島区エリアに足を運ぶ機会があれば、ぜひ店舗でできたての名物を味わってみてほしい。そして、深夜に小腹が空いたときや、ちょっとした手土産を探しているときには、街中で見かけるABCシェフズの自販機を思い出してみてはどうだろうか。
店舗で味わう出来立ての一皿と、自販機で手に入れる冷凍の一皿。どちらも同じ「キッチンABCの味」でありながら、シーンによって違った楽しみ方ができるのが、この店の懐の深さだと思う。次に池袋を訪れる予定があるなら、行き先リストに加えてみてはどうだろうか。














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